気づかないうちに進行？歯周病の怖さとは
歯周病は、「沈黙の病気」とも呼ばれるほど、自覚症状が出にくいのが特徴です。でも、放っておくと歯を支える骨が溶けてしまい、最終的には歯を失ってしまうことも…。
特に40代以降の患者さんに多く見られ、日本人が歯を失う原因の第1位にもなっている病気です。
目次
放置するとどうなる？歯周病がもたらす全身への影響
歯周病は、お口の中だけにとどまらず、全身にも影響を及ぼすことがわかっています。
心臓病や脳梗塞のリスク増加
→ 歯周病菌が血管に入り込み、動脈硬化などを進行させることがあります。
糖尿病との相互関係
→ 糖尿病患者さんは歯周病になりやすく、逆に歯周病があると血糖コントロールが悪くなる可能性も。
妊婦さんの早産・低体重児リスク
→ 妊娠中の歯周病は、胎児にも悪影響を及ぼすことが知られています。
その結果、単なる「歯ぐきのトラブル」とあなどってはいけません。早期発見・早期治療が重要です！
歯周病の疑いがある具体的な症状とは？
これまで紹介した症状には、それぞれ歯周病特有のメカニズムがあります。
ここでは、その「なぜその症状が出るのか？」という背景も含めて、より詳しく説明します。
歯ぐきが赤く腫れている
健康な歯ぐきはピンク色で引き締まっていますが、歯周病の初期段階では赤くなって腫れてきます。
歯垢の中にいる歯周病菌が、歯と歯ぐきの境目に炎症を起こします。炎症が起きた部分には血液が集中し、赤く腫れたり、触れると痛みを感じたりします。これは、体が細菌と戦っているサインです。
歯磨き時に血が出る
強く磨いているわけでもないのに、歯磨き中や後に出血がある場合は要注意です。
健康な歯ぐきからは出血しません。しかし歯周病になると、毛細血管がもろくなり、少しの刺激でも出血しやすくなります。とくに毎日の歯磨きでの出血は、見過ごしてはいけない“初期警告”です。
口臭が気になる・人に指摘された
歯周病菌の出すガスが原因で、慢性的な口臭を引き起こすことがあります。
歯周病菌が発する「揮発性硫黄化合物（VSC）」という物質が、強い口臭の原因になります。また、歯周ポケット内で膿がたまることもあり、そのにおいが口臭として現れます。
歯ぐきが下がって歯が長く見える
歯を支える組織が破壊されると、歯ぐきが下がり、歯が伸びたように見えることがあります。
歯ぐきがやせて下がると、歯の根元（象牙質）が露出します。象牙質は刺激に弱く、知覚過敏やむし歯のリスク増加にもつながります。さらに見た目も「歯が長くなったように見える」ため、審美的な悩みも増えてしまいます。
歯がグラグラする、噛みにくい
進行すると歯を支える骨が溶け、歯が不安定になることもあります。
歯周病が進行すると、歯を支えている「歯槽骨（しそうこつ）」が吸収されてしまいます。その結果、歯が不安定になり、ぐらついたり、最悪の場合は自然に抜け落ちてしまうことも…。
この段階になると、抜歯やインプラント治療が必要になるケースもあります。
これらの症状が1つでも当てはまる場合、すでに歯周病が始まっている可能性が高いです。特に「出血」や「口臭」は見逃されやすいですが、お口からのSOS信号と捉え、早めに歯科医院での健診を受けることが大切です。
「それ、歯周病のサインかも？」よくある5つの初期症状
以下は、患者さんが見逃しがちな“初期のサイン”です。
朝起きたときに口の中がネバネバする
→ 歯周病菌の活動が活発な証拠です。
硬いものが噛みにくくなった
→ 歯ぐきの炎症や歯のぐらつきが原因かもしれません。
歯ぐきがムズムズしたり、かゆい感じがする
→ 歯ぐきの違和感は歯周病の初期症状によくあります。
歯の間に物が挟まりやすくなった
→ 歯ぐきがやせて隙間が広がっている可能性があります。
歯の表面にザラつきがある
→ 歯垢や歯石がたまりやすい環境になっているサインです。
これらのサインは、「なんとなく気になるけど、我慢できるから放っておこう」と見過ごされがち。でも、まさにこの段階での対処が、歯を守るカギになります！
歯周病が疑われるときに取るべき行動
ちょっとでも「おかしいな」と思ったら、以下の行動をとりましょう。
歯科医院での健診を受ける
→ 歯周ポケットの深さや歯の動揺をチェックし、正確な診断を受けることができます。
歯垢・歯石の除去を行う
→ 歯科での専門的なクリーニング（スケーリング）は、進行を止める第一歩です。
日々の歯磨きを見直す
→ 正しい歯磨き方法を歯科衛生士に教わり、自分のクセを改善しましょう。
生活習慣を整える
→ 睡眠不足や喫煙、ストレスも歯周病を悪化させる要因です。
小さな症状でも、適切な対応を取ることで、重症化を防ぐことができます。
なぜ歯周病は気づきにくいの？その理由と盲点
歯周病は「サイレントディジーズ（静かなる病気）」と呼ばれるほど、自覚症状が出にくいのが特徴です。多くの患者さんが「気づいたときにはすでに進行していた…」と話すのは、次のような理由や盲点があるからです。
初期段階では痛みがほとんどない
歯周病のはじまりは、歯と歯ぐきの間に歯垢がたまり、歯ぐきに炎症が起きる「歯肉炎」という状態です。この段階では痛みもなく、「ちょっと歯ぐきが赤いかな？」くらいの変化しか感じない人も多いです。
その結果…
「出血してるけど痛くないし…放っておこう」
「たぶん強く磨きすぎたんだろうな」
と、スルーしてしまうケースがとても多いんです。
出血が“歯周病のサイン”だと知らない人が多い
歯磨き中の出血は、実は歯周病の初期症状。
でも、患者さんの多くはこんなふうに受け止めています。
「ちょっと強く磨いたから出ただけ」
「たまたま当たったのかも」
「寝不足で歯ぐきが腫れただけ」
こうした“思い込み”が、歯周病のサインを見逃す原因に…。
日常生活で「慣れ」が起こりやすい
- 口臭：自分では気づきにくく、指摘されないと分からない
- 朝の口のネバつき：慢性化して「これが普通」と思ってしまう
- 歯ぐきの腫れ：軽度だと見た目の変化に気づきにくい
こうした“慣れ”や“鈍感化”も、気づきを遅らせる落とし穴なんです。
年齢のせいにしてしまうことも…
歯ぐきが下がってきたり、歯がグラついたりすると、
「もう年だからね?」
「年齢的に仕方ないよね」
と、加齢による自然現象だと勘違いしてしまうこともよくあります。
でも実際には、歯周病が進行して歯槽骨（しそうこつ）が溶けている可能性も…！
気づきにくいからこそ「早めの健診」が命綱！
こうした理由から、歯周病は気づいたときには中等度～重度になっていることが少なくありません。
だからこそ、
出血がある
歯ぐきの色がいつもと違う
最近、歯が長く見える
そんなちょっとした変化を見逃さないことが大切です。
年に1～2回は歯科で健診を受け、早めにチェックしてもらいましょう！
まとめ
気になる症状があれば、すぐに歯科で健診を！
歯周病は早期発見・早期治療がカギです。「年齢のせいかな？」「ちょっと歯ぐきが腫れてるだけ…」と油断せず、少しでも違和感があれば歯科での健診を受けてください。
歯周病は予防も可能な病気です。日常の歯磨きや歯科での定期的なメンテナンスが、将来の歯の健康を守ります。
大切なのは、「気づいたときに行動すること」。自分の歯を守るために、今日から一歩踏み出していきましょう！
